「愛着スタイル」という言葉を知っていますか?
しろくまカウンセリングにいらっしゃるクライエントさんから、よく聞く用語の一つに「愛着スタイル」があります。
お悩みの例としては、
「自分の愛着スタイルを知りたいです」
「回避型の愛着スタイルで、孤独感を抱いています」
「恋愛でいつも相手に依存してしまい、不安型の愛着スタイルだと思います」
といった内容です。
このコラムでは、「愛着スタイル」について、正しく理解していただくとともに、実際にカウンセリングではどんなことを行っているのか、臨床心理士・公認心理師である筆者がくわしく解説をしたいと思います。
「愛着スタイル」とは、親しい人との関わり方の傾向のこと
それでは、愛着スタイルとは、いったい何でしょうか?
一言で言うと、「親しい人との関わり方の傾向」を指します。
愛着スタイルを知るうえで、欠かせない概念が「愛着」です。まずは、簡単に愛着の説明をしたいと思います。
愛着とは、「幼少期に特定の人と心の結びつきをもつこと」を指します。
赤ちゃんが泣くと、母親が近寄って抱っこをする。この行為が、愛着形成の原点となります。
母親が安定して赤ちゃんのケアをし続けることによって、赤ちゃんは「困ったら母親が助けてくれる」という感覚を持ちます。その感覚が、母親以外の対人関係にも広がり、「自分が困ったときは、周りの人が助けてくれる」と、言葉にするまでもなく、体感として分かるようになります。
しかし、赤ちゃんが泣いても母親が無視をしたり、あるいは怒ったりしたらどうでしょうか。
赤ちゃんは、「自分が困っても、母親は助けてくれない」という感覚をもつようになり、この子供が大人になったときに「自分が困っても、周りの人は助けてくれない」と疑うことなく信じるようになります。
「周りの人は助けてくれる」と考えている人と、「周りは助けてくれない」と考えている人では、人間関係の築き方や行動、思考に大きな差がでてくるのは明白です。
主に、両親との愛着形成がうまくいかなかった子供たちが、大人になって人間関係で悩みを抱えやすくなります。
人間関係で悩みを抱える人が、「なぜ自分は人間関係がうまくいかないんだろう」と考えるときに、そこには愛着の課題があることが多くあるのです。
愛着スタイルの3分類
親しい人との人間関係の築き方(=愛着スタイル)が、幼少期の愛着形成の影響を受けていることはイメージしていただけたかと思います。
愛着スタイルは、3つに分類できるので、その3分類について解説します。
安定型
幼少期に愛着形成がうまくできている場合、安定型の愛着スタイルになることが多いです。
相手と適切な距離感で関わることができ、長期的で安定的な人間関係を築くことができます。
他者との関わりにおいて不安や葛藤が生まれたときも、相手とうまく関わりをもって安心感を得ることができます。
自分の存在を肯定的に捉えており、他者もまた自分のことを肯定的に捉えていると当然のように確信しているため、自然体で人と接することができます。弱みを人にだすこともそれほど抵抗がありません。
全体の2/3くらいの人が、安定型の愛着スタイルと言われています。
不安型
対人関係において不安と緊張を感じやすく、相手の顔色を窺います。親と確かな絆を築けなかった場合、自分が自分自身の存在を肯定することが難しく、人に受け入れてもらうことを第一に考えて行動します。
人に合わせて行動することを、とても自然と行っているため、大人になったときに、「自分のやりたいことが分からない」といったことが起こることもしばしばです。
自分の意見を主張することが苦手であり、自分は伝え方にとても気を遣うが、相手はそれほど気にしていないということが生じます。
一方、一度心を許すと、相手との距離が近くなりすぎる傾向があります。
特に、不安が生じたときに、人との距離を近づけることによって安心を取り戻そうとし、その安心の取り戻し方が過剰で際限がなく、相手が疲弊してしまうことがしばしば起こります。
回避型
他者と親密な関わりをもつことを避け、情緒的な交流をあまり必要としない人たちです。
相手の気持ちに寄り添うことを面倒と捉える傾向があります。自分の感情に疎いことも多くありますが、感情がないわけではないので、急に怒り出したりして周りを驚かせてしまうこともあります。「何を考えているかよく分からない」と言われることもあります。
他者との関わりにおいて不安や葛藤が生まれたときに、しばしば相手から離れることによって安心を取り戻そうとする傾向があり、「人間関係のリセット癖」のエピソードが聞かれる方もいます。
人に頼るよりも、自立的、自己完結的な生活を好み、生涯独身の方も多いように思います。
※不安型と回避型が混在する「恐れ・回避型」という分類をする場合もあります
愛着スタイルとカウンセリング
さて、こうした愛着スタイルに関してカウンセリングを行う場合に、しろくまカウンセリングでは、どのようにカウンセリングを進めていくのかお伝えしたいと思います。
クライエントさんのご要望やご状況によって、あるいはカウンセラーの個性によっても進め方は異なることを念頭に置いていただいて、ここでは、筆者のカウンセリングの進め方について、一例をご紹介します。
余談ですが、ここまで愛着スタイルについて、お伝えしてきたものの、実際のカウンセリングにおいては、愛着スタイル理論に当てはめてクライエントさんのことを捉えることはあまりしません。
カウンセラーのなかにある理論に当てはめるよりも、クライエントさん自身がどのような枠組みで世界を捉えているのかについて、なるべくクライエントさんの視点に立って考えたいと、筆者は思っています。
初回のカウンセリング
初回のカウンセリングでは、カウンセリングに来ようと思った動機やどんな困りごとを抱えているのか、カウンセリングを通してどんなふうになれたらよいかについて、お伺いさせていただきます。
カウンセリングの最後に、カウンセラーとして感じたことや今後の進め方についてご提案をします。
2回目~4回目のカウンセリング
家族関係や幼少期の経験について、時系列に沿ってお伺いさせていただきます。
自身の困りごとがどのように形成されてきたかについて、整理をしながら、一緒に探っていくようなイメージです。
3回程度で実施することが多いパートですが、お人によっては、7回、10回と続く方もいらっしゃいます。回数にとらわれず、心のなかにひっかかっていること、カウンセラーに話してみたいことは、納得いくまで話していただくのが良いと思います。
5回目のカウンセリング
2~4回目のパートを受けてのまとめの回となります。話してみて感じたこと、カウンセリングとカウンセリングの間に考えたことなど、ぜひ自由にお聞かせいただければと思います。
カウンセラーとして感じたことや、どのような人間関係のパターンがありそうかなど、お話できればと思います。
また、まとめを踏まえて、初回のお悩みごとに対して、工夫できそうなことはあるか、どんなふうに生きていったらよいかなど、お話できると良いと思います。5回目でカウンセリング終結となる方もいらっしゃいますし、その後6回目以降に続く方もいます。
6回目以降のカウンセリング
5回目のカウンセリングで、具体的な目標を決めて、6回目以降取り組む方もいらっしゃいます。例えば、「いつもは断っている友人との飲み会に行ってみる、そのときに感じたことを次のカウンセリングで話す」といった感じです。
もしくは、カウンセリングとカウンセリングの間で起こったこと、考えたことや感じたことを自由にお話いただくこともあります。
どのような進め方がよいかはその都度、カウンセラーと話していただくのが良いと思います。
愛着の課題は、すぐに解決することはありません。行きつ戻りつしながら、少しずつお悩みごとの解決に近づいていくことがほとんどです。
また、不安型や回避型の愛着スタイルの場合、自分で不安を抱えること自体が苦手であることが多くあります。その不安を、手っ取り早く解決する手段として、人と離れたり、近づいたりします。
カウンセリングを続けることによって、「つらいことがあっても誰かに聞いてもらえる安心感」を継続して得られることも、大きなメリットだと思います。
新宿しろくまカウンセリングでは、カウンセリングのお申込みを受け付けています
新宿しろくまカウンセリングでは、愛着スタイルをはじめ、人間関係や家族関係に関するお悩みについて、カウンセリングを行っております。
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