生きづらさの原因について考える
顔色を伺いすぎてしまう、人に頼ることができない、友人と呼べる人がいない、自分の気持ちを抑えて人に合わせてしまうなど、人にはさまざまな悩みがあります。
こういった悩みを深く掘り下げていくと、「親子関係・家族関係が関わっているのではないか」と感じて、心理カウンセリングにいらっしゃる方がいます。
カウンセリングにいらっしゃる方の多くは、キーワードとして「愛着障害」「毒親」「アダルトチルドレン」を挙げられます。しかし、「親子関係が生きづらさの原因になっているような気がするけれど、その先どうしたら良いか分からない」という方がほとんどです。
このコラムでは、愛着障害/毒親/アダルトチルドレンの方が、回復していくために、心理カウンセリングで、どのようなことを行っているのか、お伝えしていこうと思います。
「愛着障害」とは何か?
「愛着障害」とは、赤ちゃんの頃に、母親や父親などの特定の養育者との間に、安定した心理的な絆を結ぶことができず、人間関係の築きづらさなどの特徴が現れることです。
※特定の養育者は、母親であることが多いことから、このコラムでは母親を前提として記載します。
「赤ちゃんの頃に、母親との絆が結べなかったことが、今の性格に影響している」と、言われても、あまりピンと来ない方も多いと思います。赤ちゃんのころの記憶はなく、それが今の自分の困りごとにどのように関係しているか、分かりにくいものだと思います。
少しイメージしてみましょう。
赤ちゃんは、無力な存在です。困ったことや嫌なことがあっても、泣くことしかできません。しかし、泣いたらお母さんが飛んできてくれます。痛いときは、「痛いね」と優しく抱っこされ、お腹が空いたら、「お腹すいたよね」とご飯をくれます。
母親が、十分なスキンシップと感受性を持って赤ちゃんに接することで、赤ちゃんは、「困っても、母親は助けてくれる」と無意識のうちに学習していきます。
この赤ちゃんの頃の母親とのゆるぎない愛着こそが、その後のその人の愛着のベースとなり、ひいては「困っても、自分は助けてもらえる」といった世界に対する安心感につながっていくのです。
逆に、痛いときに「何で泣くの!」と怒鳴られたり、お腹が空いても無視されたら、どうでしょうか。赤ちゃんは、認められていない、愛されていないと、感じてしまいます。
幼少期の頃に、愛着がうまく形成されないと、安心感が持てず、不安になりやすい、些細なことで傷つきやすいといった特徴が現れます。
子供の頃に獲得できなかった愛着のべースが、大人になったその人の人間関係の悩みごとにつながっていくのです。
「愛着障害」と「毒親」「アダルトチルドレン」との関係性
最近は、「毒親」や「アダルトチルドレン」という言葉もよく耳にするようになりましたので、これらの用語にも少し触れたいと思います。
「毒親」とは、その名の通り、子供にとって毒になる(=害悪を及ぼす)親のことを言います。
また、「アダルトチルドレン」とは、機能不全家族のなかで育ち、生きづらさを抱えている人のことを指します。
「愛着障害」は、赤ちゃんの頃の愛着形成に焦点をあてており、「毒親」では、親の性格や自己愛を中心に考えます。「アダルトチルドレン」では、家庭がうまく機能していないなかで、立場の弱い子供への心理的ダメージについて考えます。
愛着障害、毒親、アダルトチルドレンは、意味の違いはあるものの、大人になったクライエントさんの臨床像や悩みごとには、重なる部分が多くあります。
愛着障害/毒親/アダルトチルドレンを抱えるクライエントさんに対する心理カウンセリングの進め方
初回カウンセリングでは、現在のお悩みごととそれに関連するエピソード、医療機関の受診歴、ご家族構成などをお伺いします。
その後、ご家族のそれぞれの性格や、今まで経験してきたこと、悲しかったことや嬉しかったことなどを少しずつお伺いしていきます。
過去を思い出すことは、時に危険を伴います。特につらい経験、自分自身の存在自体が揺らぐような出来事は、思い出すことによって、クライエントさんが体調を崩してしまう場合もあります。
家族関係と向き合うことは、クライエントさんの人生のなかで大事なことだと思いますが、一方で、現在の日常生活を送っていくことも、またとても大切なことです。専門家であるカウンセラーと一緒に少しずつ進めていく形になります。
過去の話や家族のことを、安心した場で話すことで、癒される部分は多くあります。
家族関係については、なかなか人に話しにくいものですから、肯定的に聞いてもらえること、その過程を通してカウンセラーとの信頼関係を築いていくこと自体に大きな意味があると思っています。
また、自分の今の困りごとが過去とどのように関連しているのか、自分の性格、考え方の特徴などを、カウンセラーとともに知る作業でもあります。
愛着障害/毒親/アダルトチルドレンと一口に言っても、父親や母親の性格、兄弟の有無、祖父母の存在、友人関係などによって、その特徴や困りごとは、多岐にわたります。
「愛着障害ということはこういう特徴がある」とラベルをはることなく、まずはフラットにそのクライエントさんのことを、よく知りたい、理解したいとカウンセラーは思っています。
過去のことを一通り話したところで、カウンセリングを終結する場合もありますし、今後家族とどう付き合うかのお話をすることもありますし、自身の性格や考え方についてお話していくこともあります。
このあたりは人によってそれぞれなので、そのときどきのお気持ちをカウンセリングでお聞かせいただければと思います。
カウンセリングにゴールはない
カウンセリングにいらっしゃる方によく聞かれる質問の一つとして、「カウンセリングは、何回くらい通えばよくなりますか」というものです。カウンセラーとしてはなかなか答えにくい質問です。
まずは1回カウンセリングにお越し頂いてみて、カウンセラーと相性が合いそうであれば、家族の話と過去の振り返りで、その後5回くらい通ってみるのが良いかと思います。
自分を知ることに終わりはありませんし、心と向き合うことは一生続いていく作業です。クライエントさんの納得したタイミングで、終結したい旨、カウンセラーにお声がけいただければと思います。
また、一度終結しても、「自分の心と向き合いたい」「辛いことがあって話を聞いてほしい」と思うタイミングが来れば、再度ご来室ください。
新宿しろくまカウンセリングは、いつでも安心して話せる場であり、クライエントさんの味方であり続ける場でありたいと思っています。
新宿しろくまカウンセリングでは、カウンセリングのお申込みを受け付けています
新宿しろくまカウンセリングでは、親子関係、家族関係に関するお悩みについて、カウンセリングを行っております。
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