アサーションは、トレーニングを繰り返すことで身につく
「アサーション」という言葉をご存じでしょうか?職場やパートナー関係で役立つ、コミュニケーションスキルの一つです。
言葉の定義を知っていても、それを実践することは、案外難しいものです。特に、アサーションは、実践をすることで初めてその真価を発揮しますが、いざやってみようと思っても、すぐにはうまくいかないことがほとんどです。
著者がアサーションの概念を学んだとき、「覚えるべき心理学用語の一つ」として捉えていました。しかし、トレーニングすればするほど、その難しさと奥深さに気が付き、今では「ぜひいろんな人にアサーションを知って、実践をしてほしい」と考えています。
さて、このコラムでは、アサーションの基礎である3つのコミュニケーションスタイルを学んでいることを前提に、事例を踏まえて、よりアサーションについて考えていきたいと思っています。
アサーションの3つのコミュニケーション方法をご存じない方は、まずはこちらのコラムをご覧ください。
事例1) パートナーがゲームばかりしていて、悲しいしろくまさん
1つ目の事例は、パートナーのちゃくまさんと一緒に同棲をしているしろくまさんです。みなさんも、「自分だったらどうするかな?」という視点で一緒に考えてみてください。
最近仕事が忙しいしろくまさんは、パートナーのちゃくまさんとお家でのんびり過ごしたいと思い、今日は定時で仕事を終えることにしました。
家に着き、パートナーのちゃくまさんとおうちでのんびりしていますが、ちゃくまさんはゲームばかりやっていて、しろくまさんはだんだんとさみしい気持ちになってきました。
しろくまさんは、「ちゃくまさん、ゲームじゃなくて、一緒に話がしたいな」と伝えてみました。
ちゃくまさんは、「おうちでのんびりしてるときは、ゲームがしたいんだ」と言って、ゲームの画面から顔をあげてくれません。あなたならどうしますか?
事例の回答を3つ準備しましたので、見てみましょう。
しろくまさん「なんでそんなこと言うの!私よりゲームが大事なんでしょ!」と言って、ゲームのコンセントを抜いた。
悲しい気持ちでいっぱいになったが、何も言わずに我慢した。ちゃくまさんに分からないようにお風呂で泣いた。
しろくまさん「私、ちゃくまさんとおしゃべりしている時間が何よりも幸せで、仕事の疲れも飛んでいくんだ。だから、ちゃくまさんと、おしゃべりがしたいんだ」
ちゃくまさん「ぼくは、しろくまさんと同じ空間にいるだけで幸せだよ。しろくまさんにとって、僕とのおしゃべりの時間がそんなに大事なんて知らなかった!ゲームは、なるべくしろくまさんがいないときにするね」
事例1のポイント 対話を続けることで、相手との考えの違いが見えてくる
事例1は、いかがでしたでしょうか?近い関係であればあるほど、自分のことをよく知ってもらっている気になり、自分の気持ちや考えを伝えることを怠ってしまうきらいがあります。
今回の事例は、アサーティブを心がけることによって、お互いの考えの違いが明確になりました。しろくまさんは、「おしゃべりしている時間が幸せ」と感じ、ちゃくまさんは、「同じ空間にいることに幸せ」と感じます。
互いの考えが明確になれば、あとはお互いの希望をすり合わせて、良い塩梅の対処方法を見つける形になります。
事例2) 昇進にモヤモヤしているくろくまさん
事例2は、職場におけるシチュエーションです。くろくまさんの気持ちになって、一緒に考えてみましょう。
くろくまさんは、営業職として働いています。真面目で、部下からも慕われているくろくまさんは、上司からも期待をされている存在です。
ある日、上司との面談で、上司から「くろくまさんを、係長に昇進させたいことについて、部長に伝えておいたよ」と、嬉しそうに言われました。
くろくまさんは、「そうなんですね、ありがとうございます!」とその場では伝えましたが、なんだかモヤモヤした気持ちがあり、その日はどっと疲れてしまいました。あなたはこんなとき、どうしますか?
2つの回答を準備しましたので、見てみましょう。
モヤモヤした気持ちがあるものの、誰に昇進の話をしても「よかったね!」と言われたため、そのまま仕事を続け、係長になった。
モヤモヤした気持ちが何なのか、考えてみたところ、くろくまさんは、昇進をしたくないと思っていることに気がついた。しかし、社風として、昇進しないことを選択する人は少なく、どうしようか悩んだが、思い切って昇進を希望しないことを上司に伝えた。
事例2のポイント アサーティブになるには、自分の気持ちに気が付き続ける必要がある
事例2は、いかがでしたでしょうか?自分の気持ちを素直に表現するために、まずは自分の気持ちに気がつく必要があることを実感していただけたのではないでしょうか?
「自分の気持ちに気がつく」というのは、当たり前のように見えて、その習慣がない人にとっては、とても難しいことです。
例えば、友人から「今日のランチ何食べたい?」と聞かれたときに、本当に自分が食べたいものを考える前に、“友人は何が食べたいだろうか?“と考える人は、案外多くいます。
特に職場では、上司の意向を汲み、上司に合わせて動くことが、評価につながるため、なかなか自分の気持ちに気がつくことが後回しになってしまうことも多いでしょう。
余談ですが、アサーションでは、気がついたすべての気持ちを相手に伝える必要はありません。
気持ちに気がついたうえで、あえて「伝えない」ことも、重要な選択の一つです。気が付いてあえて伝えない選択肢をとることと、気持ちに気が付かずにいることは、心の健康度に大きな違いがでてきます。
アサーティブ・トレーニングをしてみよう
今回は、パートナー関係と上司との関係における、アサーティブの例をご紹介しました。
事例を通して、大事な2つの考え方「対話を続けて、相手との考えの違いを明確にすること」「自分の気持ちに気がつくことの重要性」を実感していただけたでしょうか。
アサーションは、一朝一夕に身につくものではありません。ぜひ日々のなかで、トレーニングを繰り返し、良い人間関係を築いていく手助けにしていただければと思います。
アサーションに関する書籍のご紹介
アサーションについて、もっと知りたい方は、以下の書籍をおすすめします。
非主張型の主人公が、さまざまな出来事を経験しながら、少しずつアサーティブを実践していく様子が描かれています。
マンガでやさしくわかるアサーション
平木 典子(著)、星井 博文(シナリオ制作)、サノ マリナ(作画)
出版社 日本能率協会マネジメントセンター
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