「自己肯定感」という言葉を、一度は耳にしたことがあると思います。
例えば、「あの人は自己肯定感が高そうでうらやましいな」「落ち込みやすいのは、自己肯定感が低いからかな」といった会話を耳にすることはないでしょうか?
インターネットでもたくさんの記事を目にしますし、最近はテレビでも、自己肯定感が特集されており、心理学の枠を超えて、一般的な用語として広まりつつあります。
この記事では、自己肯定感について、高い、低いとはどういった状態なのか、また、原因別の対処方法について、臨床心理士・公認心理師である筆者が解説したいと思います。
自己肯定感とは、「ありのままの自分をそのまま丸ごと肯定できる感覚」のこと
まずは、自己肯定感の定義について、おさらいしましょう。
自己肯定感とは、ありのままの自分をそのまま丸ごと肯定できる感覚のことです。「そのまま丸ごと」というのは、「仕事ができるから」とか、「人から好かれているから」といったように条件付きではなく、良い面も悪い面も含めて丸ごと大丈夫と思えることです。
自己肯定感が高い場合と低い場合の比較
それでは、具体的に、自己肯定感が高い場合と低い場合で、どのような違いがあるのか、場面別に見ていきましょう。
| 自己肯定感が高い場合 | 自己肯定感が低い場合 | |
|---|---|---|
| 物事に失敗したとき | ・失敗を素直に認めて、反省し、対策を立てられる。 ・反省した後は、気持ちを切り替えて先に進むことができる。 | ・失敗する自分は、「価値がないダメな自分だ」と考え、失敗に向き合うことが難しくなる。 ・言い訳ばかり考えてしまったり、思考が停止したりして、辛い気持ちが長く続く。 |
| 物事に成功したとき | ・「自分にはそれだけの実力があるんだ」や「これまで努力してきた結果が実った」と成功を素直に喜ぶことができる。 | ・「運が良かっただけだ」や「次は失敗するに違いない」と考えて成功を心から喜ぶことができない。 |
| 人に褒められたとき | ・素直に受け止める。 ・相手と良好な関係を築くことができる。 | ・「お世辞を言っているだけなのではないか」や「本当の自分を知ったら相手は失望するに違いない」と居心地の悪さを感じる。 |
このように対比してみると、自己肯定感が高い場合、物事への対処や対人関係もスムーズに進みそうです。また、人生の幸福度も高くなるでしょう。
一方、自己肯定感が低いと、不安を抱えやすく、やるべきことがうまく進まなかったり、対人関係で悩んだりすることが多くなってしまいます。
しかし、その不安感が物事を頑張る原動力となることもあり、一概に自己肯定感が低いことが悪いわけではありません。
自己肯定感は、なぜ低くなる?代表的な3つの原因について解説
それでは、なぜ自己肯定感が高い人と低い人がいるのでしょうか?
人は生まれてから、さまざまな人と関わり、さまざまな環境に身をおいて、大人に成長していきます。そうした成長の過程で自己肯定感に影響を与えやすい3つの要因について、考えてみたいと思います。
条件付きの承認
特定の条件を満たした場合にのみ、価値や存在を認められるような環境に長く身を置くと、自己肯定感は低くなる傾向にあります。
代表的な例は、両親との関わりです。
例えば、親から、「テストで100点を取ったからいい子」とか「そんないたずらをする子はいらない」などと言われ続けていると、自己肯定感は低くなってしまいます。もちろん、良い点数を取って褒められる、悪いことをして叱られるのが悪いということではありません。100点を取らなくてもいたずらをしても、親は変わらず自分に関心を持って愛してくれているという安心感を持てていれば大丈夫です。
自己肯定感が低くなってしまうケースでは、親にとって「理想的な子供像」があり、その理想から外れた場合に、子供は怒られることになります。
多かれ少なかれ、親は子供に期待をするものですが、その理想の幅があまりに狭すぎると、子供は「お父さん、お母さんの思う理想的な子供にならないと認めてもらえない」と無意識的に思うようになります。
人格否定
本人の個性や存在そのものを否定するような言葉を浴び続ける、もしくは無視されることによっても、自己肯定感は低下します。
代表的な例は、いじめです。
明確な理由があって、人間関係がうまくいかなくなる場合は問題ありません。理由に対して対策を立てることができます。
しかし、いじめは、多くの場合、理由がない、もしくは分からないものです。過剰に周りの顔色を伺うようになり、「そのままの自分では周囲は受け入れてくれないんだ」という感覚につながります。
もともと自己肯定感が低い場合はもちろんですが、自己肯定感が高い方であっても、適応障害などのメンタルヘルス上の疾患を発症してしまう可能性がある状態です。
行き過ぎた成果主義
頑張って取り組んだ過程が評価されず、目に見える成果や成績のみが評価されるような環境に身を置いた場合も、自己肯定感は下がりやすいでしょう。
例えば、成果主義の会社を考えてみましょう。
仕事をするうえで成果を出すことは大切ですし、成果を評価されることはやる気にもつながります。
しかし、精一杯努力して、結果がでなかったときはどうでしょうか。例えば、たまたまクレーム気質のクライエントを受け持つことになり、「とにかく頑張る」という方法だとうまくいかなくなり、メンタル不調を起こした場合はどうでしょうか。
成果をだす人を認めるというのは、裏を返すと、成果を出さない人は認めないということです。長い社会人人生のなかで、努力が成果につながるときもあれば、つながらないときもあります。仕事がうまくいっていないときに、厳しい言葉を浴びせられ続けると、必要以上に「この会社で自分は必要とされていないんだ」という感覚につながってしまいます。
自己肯定感を高めるには?
自己肯定感が低いことが一概に悪いことではありません。
しかし、必要以上に自分を責めたり、自分を貶めるような言葉を自分にかけ続けると、心は疲弊してしまいます。
メンタル不調をおこさないためにできる工夫をご紹介します。
条件付きの承認が原因なら
子どものころに条件付きの承認ばかりされていると、大人になってからも、自分に対して条件付きでしか認められなくなってしまいます。
例えば、些細なミスで過剰に自分を責めてしまった時、「完璧な自分でないと価値がない」という思考が浮かんでいませんか?「ミスをしない人なんて本当にいるのだろうか?」と一歩立ち止まって考えてみてください。あるいは、「後輩が同じミスをしたら、その後輩は価値のない人間だと考えるだろうか?」と他人に置き換えて考えてみるのも有効です。自己肯定感が低い人は、どうしても自分に対して厳しくなりがちです。
人格否定が原因なら
いじめやパワハラなど、環境の問題が大きい場合には、自分を守るために、その環境を変える、離れることも時には必要な決断です。
しかし、人は追い詰められると冷静な判断も難しくなってしまいます。そういった時は、信頼できる人を見つけてまずは相談してみることも大切です。
行き過ぎた成果主義が原因なら
職場の中に必ず誰か一人は、あなたの頑張りを見てくれている人がいるはずです。そして、何より、自分自身に対して「よく頑張った」と認めてあげてください。
あるいは、あなたの周りに、あなたと同じように、頑張りを認めてもらえず落ち込んでいる人がいたら、ぜひ「自分はちゃんと見ていたよ」「あなたのおかげで助かったよ」と、声をかけてあげてください。他者の良い部分を見れる人は、自分の良い部分にも目を向けやすいものです。
日ごろから、良い部分に目を向ける意識をもてると良いですね。
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些細な失敗をいつまでも引きずってしまって辛い、いつも何となく自信がなくて不安な気持ちを抱えているという場合、その背景に自己肯定感の低さが関係しているかもしれません。
今回は、代表的な例を3つ紹介しましたが、実際はもっとさまざまな要因が複雑に絡み合い、どこから手をつけてよいのか分からない状態だと思います。
そんな時は一度カウンセリングルームへ足を運び、カウンセラーと一緒に自己肯定感について考えてみてはいかがでしょうか。
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